本文へスキップ
Seeworks身のまわりの仕組みを、動かして見る

Tier 2 ・ 剛体リンク・やや複雑

扇風機の首振り

首を振らせているのは、羽根を回しているのと同じ1個のモーターです。

公開 ・ 更新

扇風機の首振りの3Dモデルの静止画

ドラッグで視点、ホイールで拡大縮小。再生・断面・部品の切り替えはビューアの操作から。

何が起きているか

扇風機のスイッチを入れて、首振りのつまみを押す。羽根が回り、首がゆっくり左右に振れ始めます。多くの人がなんとなく「首を振る用の小さなモーターが別にあるのだろう」と思っていますが、ありません。 モーターは 1 個だけです。

この先に出てくる手書きの図では、赤が「速い回転」、青が「ゆっくりした動き」を表します。色が見分けにくいときは、置き場所で見てください。速い道は上、遅い道は下に描いてあります。色を別の意味で使っている図には、その図の説明にそう書いてあります。

同じ 1 個のモーターから出ているモーター1 本の軸羽根1 秒に 3 回あまり首 1 往復で 30 回転÷30歯 30 枚中心からずらすウォームホイールピンリンク首9 秒で 1 往復(首振り 1 回ぶん)
1 個のモーターから 2 本の道が出ている。赤が速い上の道(羽根へ)、青が遅い下の道(首へ)で、ここでの色は材料ではなく速さ。ウォームで 30 分の 1 に落としてから首へ。分かれ目は軸の上で、そこから先が別の速さになる。

上のモデルは、はじめから半分に切ってあります。モーターの外がわとギアの箱を、軸の高さで水平にすぱっと切って、上半分を外してあります。3D のモデルでは、色がそのまま部品の材料です。

  • 赤い切り口=切り開いたケース
  • 緑=塗装(ケース・支柱・台座)
  • 銀=鋼(軸・ウォーム・リンク)
  • 真鍮(しんちゅう)色=ウォームホイール
  • 黄=クランクピン

まず「再生」を押してください。羽根が速く回り、首がゆっくり振れます。この 2 つの速さの差が、これから説明することのすべてです。

1 本の軸が、前と後ろで別の仕事をしている

切り開いたモーターの中を通る 1 本の軸。左端に羽根、右端にウォームが付いてギアケースの中の真鍮の歯車と噛み合っている
軸をたどると、左端のから右端のまで 1 本でつながっている。途中の溝の入った円筒が。

溝の入った円筒がローター、その真ん中をつらぬいている細い棒が軸です。軸の左はしには羽根が付いていて、右はしはモーターの外まで出て、奥の箱の中まで伸びています。

「再生」の横のつまみをゆっくり動かして、軸の左はしと右はしを交互に見てください。同じ速さで、同じ向きに回っています。 1 本の棒なのだから当たり前です。

つまり首を振る力は、どこか別のところから持ってきているのではありません。羽根を回すついでに、軸の反対のはしから取り出しているだけです。

ねじが 1 回転しても、歯車は歯 1 枚

問題は速さです。羽根は 1 秒に 3 回あまりも回ります。首が同じ速さで振れたら、風どころではありません。

ふつうの歯車でゆっくりにしようとすると、何段も重ねることになって、箱が大きくなってしまいます。そこで使うのがウォーム。軸にそのまま刻んだ、ねじのような歯です。

ねじ 0 回転歯 30 枚
ねじ 0 回転 赤い針が、印を付けた 1 枚の歯。真上に置いて始める。
歯 1 枚ねじ 1 回転歯 30 枚
ねじ 1 回転 歯車は歯 1 枚ぶんしか進んでいない。
歯 5 枚ねじ 5 回転歯 30 枚
ねじ 5 回転 やっと歯 5 枚ぶん。30 回転して、ようやく 1 周。
ねじ山を真横から、歯車を真上から見た図。歯の数はモデルと同じ 30 枚。灰色の点線が真上の目印、赤が印を付けた歯。

ねじが 1 回転すると、ねじ山は 1 山ぶんだけ横へずれます。そのとき歯車の歯を、横から 1 枚だけ押し出します。歯は 30 枚あるので、ねじが 30 回転して、歯車はやっと 1 周。

たった 1 組のかみ合わせで 30 分の 1 になる。これがウォームのすごいところです。

そのかみ合いを、モデルの中で見る

ギアケースを切り開いた中で、鋼のウォームのねじ山が真鍮のウォームホイールの歯に食い込んでいる
切り開いたの中。のねじ山が、の歯の谷にぴったり入っている。ねじの向きは軸方向なのに、歯車は円周方向に押される。

図では平らに描きましたが、本物のねじ山はらせんです。歯車の歯のほうも、それを抱きこむように弧を描いて削ってあります。

「速度」を落としてから、「再生」の横のつまみを動かしてみてください。ねじが何度も回っているのに、真鍮の歯車はじりじりとしか動きません。

羽根が 30 回まわるあいだに、首は 1 往復

羽根の向き30 回転右いっぱい左いっぱい首の向き折り返し折り返し02.254.56.759秒
首が 1 往復するのに 9 秒。上の赤いギザギザが羽根の向きで、そのあいだに 30 回転する。下の青い線が首の向き。「再生」の横のつまみは、この横軸そのもの。

赤と青は、同じ 1 本の軸から出ています。違うのは、あいだにウォームが 1 組はさまっているかどうかだけです。

青い線をよく見てください。山と谷のてっぺんで、線が平らに寝ています。 ここが「折り返し」で、首はいったん止まります。 逆に線がいちばん急なのは、グラフの左右のはしと真ん中。首がまん中を通るときで、そこがいちばん速いところです。

円を、行って戻る動きに変える

これで「ゆっくり回る歯車」ができました。でも歯車は回り続けるだけです。首は行って戻らなければいけません。

ギアケースの下で、支柱の固定ピンとホイールのクランクピンを 1 本のリンクが結んでいる
ケースの下をのぞいたところ。左の球が支柱に立てた、右の球がホイールの。その 2 つをが結んでいる。

真鍮の歯車には、中心から少しずらした位置にピンが立っています。歯車が回ると、このピンは小さな円をぐるぐる描くだけです。

そのピンにリンク(細長い棒)のはしがはまっています。棒のもう一方のはしは、下の支柱に立てた動かないピンにはまっています。

つまみをゆっくり動かして、この棒の両はしを見てください。歯車側のはしは円を描こうとし、支柱側のはしはどこにも行けません。

動かない相手がいるから、首が振れる

dabc首振り軸支柱の固定ピンホイールの軸クランクピン羽根a クランク b リンク(棒)c 支柱(動かない) d 首の腕薄い線 = 左右いっぱいの形
首が振れる軸の真上から見た図。太くて黒い c だけが動かない。あとの 3 本はぜんぶ動く。どの棒も長さは変わらない。薄い線は、首が左右いっぱいまで振れたときの形。

ギアの箱は首に載っていて、首といっしょに動きます。だから箱の中だけを見ていると、ピンはただ円を描いているだけで、往復も何もありません。往復が生まれるのは、リンクのもう一方のはしが、首といっしょには動かない支柱につながっているからです。

図の 4 本の辺のうち、動かないのは支柱の c だけ。残りの 3 本 — 首の腕 d、クランク a、リンク b — は全部動きます。どの棒も長さは変わりません。ピンが円を描こうとしたとき、このつじつまを合わせる方法はひとつしかありません。首のほうが向きを変えるのです。

「部品」ボタンでを選んでみてください。首が振れても、この部分だけはぴくりとも動きません。

首が振れる、3 つの瞬間

左いっぱい見ている向き首が片側いっぱいに振れて、画面の左に寄った扇風機。斜め上から見下ろしていて、ガードの輪は楕円に見える
左いっぱい クランクとリンクが折り重なって一直線になっている。首は左いっぱいで、画面でも左に寄っている。
まん中見ている向き首が振れ幅の中央を向き、画面の中央に写った扇風機。羽根はこちらを向いていて、ガードの輪は横長の楕円に見える
まん中 左いっぱいと右いっぱいの、ちょうど中間。首がいちばん速く動くのは、ここを通るとき。羽根はこちらをまっすぐ向いていて、画面でも中央に写る。
右いっぱい見ている向き首がもう片側いっぱいに振れて、画面の右に寄った扇風機。ガードの輪は 1 枚目と左右対称の楕円に見える
右いっぱい 今度は 2 本がまっすぐ伸びきって一直線。首は右いっぱいで、画面でも右に寄っている。
3 枚とも同じ場所から、少し上を向いて撮っている(台座の丸がそろっているのが目印)。だから画面の左右が、そのまま首の左右。輪が楕円に見えるのは、見下ろしているから。各コマの上に付けた小さな図は、その瞬間を真上から見た首の向きで、下の黒い矢じりがこちらを見ている向き、青い矢印が羽根の向き、薄い弧が首の振れる範囲。ピンが円を半周するあいだ首は片側へ、残りの半周で逆へ。ピンが 1 周すると、首は 1 往復。

いっぱいまで振れたところで首が止まるのは、その瞬間クランク a とリンク b が一直線に並ぶからです。片側では 2 本がまっすぐ伸びきり、反対側では折り重なって短くなります。

ピンは同じ速さで回り続けているのに、この瞬間だけ、リンクを押したり引いたりする向きの力が消えます。行きと帰りの折り返しは、ここで起きています。

首振りを止めても、羽根は回り続ける

つまみを押す=首振り ONウォームホイール回るリンク → 首へピンが穴に入り、首が振れるつまみを引く=首振り OFFウォームホイール回る抜けているリンク → 首へ歯車は空回りし、首は止まるどちらでもモーターは回ったまま。羽根は止まらない
首振りのつまみは、モーターではなくピンと歯車のつながりを切っている。歯車は空回りし、リンクは動かなくなり、首は今向いている方向で止まる。

首振りのつまみを押したり引いたりすると首振りが止まったり動いたりするのは、モーターを切り替えているのではありません。このピンと歯車のかみ合わせを外しているだけです。外れた歯車は空回りし、リンクは動かなくなり、首は今向いている方向で止まります。羽根はそのまま回り続ける。モーターは 1 個なので、そうなるのが自然なのです。

このクラッチはモデルには入れていません。 3D の首振りはいつも動いたままです。

もう一度、全体を

  1. モーターが軸を回す。左はしの羽根が回る
  2. 同じ軸の右はしに刻まれたねじ(ウォーム)が回る
  3. ねじが 30 回転して、歯車が 1 回転する
  4. 歯車の上のピンが、小さな円を 1 周する
  5. ピンと支柱の固定ピンをつなぐリンクの長さが変わらないので、首が左右に 1 往復する
  6. 1 に戻る

速い回転と、ゆっくりした揺れ。まったく別の動きに見える 2 つが、1 個のモーターから出ています。

実物と変えたところ

このモデル1 コマでほんの少し進みすぎないので素直に回って見える実物どおりの速さ1 コマで半周以上羽根はどれも同じ形なので逆に回って見える薄い線が 1 コマ前の羽根の位置
画面は、1 秒間に何十枚も絵を差し替えるパラパラ漫画です。羽根は 3 枚あって、どれも同じ形。だから1 コマのあいだに羽根が進みすぎると、目には逆回りに見えます。このモデルの速さなら大丈夫ですが、実物どおりの速さにすると逆回りして見えてしまいます。
  • ゆっくりにする度合いを、実物の 300 分の 1 前後から 30 分の 1 にゆるめました。 実物のままだと、首が 1 往復するあいだにモーターが数百回転します。画面では羽根がちらつくか、上の図のように逆回りして見えてしまいます。ねじ 1 回転=歯 1 枚という仕組みそのものは変えていません。目で追える速さに落としただけです。
  • 首振りのクラッチは入れていません。 3D の首振りは止まりません。
  • 首の振れる幅と、1 往復 9 秒という速さは、実物とだいたい同じにしてあります。

最後に、モデルの上に出ている印を順に開いてみてください。ここで読んだ話が、実物のどこなのかつながります。じゃまなときは「注釈」ボタンで消せます。視点を動かしすぎたら「視点を戻す」で元にもどります。

部品の説明

ビューアの部品ボタンと同じ並びです。

羽根とガード
羽根はモーターの軸に直接つながっていて、速く回る。ガードは回らず、首といっしょに向きだけ変える。
モーターと軸
羽根を回す 1 個のモーター。軸は前で羽根を、後ろでウォームを回している。
ウォーム(ねじ歯車)
軸に刻んだねじ。1 回転するあいだに、相手の歯車を歯 1 枚ぶんしか送らない。
ウォームホイール
歯は 30 枚。ウォームが 30 回転して、ようやく 1 回転する。これが首振りのゆっくりさの正体。
クランクピン
ホイールの中心から少しずらした位置に立つピン。回転がここで往復に変わる。
ギアケース
ウォームとホイールを入れてある箱。首といっしょに動くので、中の歯車も首に載っている。
支柱と台座
動かない側。首振り軸と、リンクを受け止める固定ピンがここにある。
ヨーク(首の付け根)
支柱の上でモーターを抱え、首振り軸のまわりに回る。